【夜による作曲と歌劇】
屋根裏部屋 1

屋根裏部屋にはフランス国歌が雷のように鳴り響いていた。
まるで、子供を閉じこめるのだ子供を閉じこめるのだと叫ぶように。
光子は、屋根裏部屋のつめたい石みたいなカーペットにぺたんと座りながらキティをいじくりまわした。キティは、ここへ初めて来た夜に、お祝いとして歓迎の証として、お祖母さまがくれた人形である。
お祖母さまは言ったものだ。
「あなたは最愛のキャンサー(腫瘍)よ。ずっとここにいてね。」
おばあさまの言葉はまぎれない皮肉だったが、当時6歳だった光子にわかるはずはない。
赤いカーテンは太陽を完全に絶しようとがんばっていた。なぜなら、分厚いカーテンの四隅には巨大な鉄釘が深々と打ちこまれていたし、ここには何もないという実感を痛いほど感じさせるのもまた、この血のように赤いカーテンだったからだ。
ここにはちびたろうそくはおろか、光源になるようなものは一切なかった。
ささやかな外の光はむしろ光子を怯えさせるのだ。まるで、自分が太陽病であるかのように、部屋の中へわずかに漏れてくるひかりには強迫的なものがあったし、その光は、おまえは何者だおまえは何者だと、追い詰めてくる悪魔のささやき声のようだった。
そして、光子はたしかにその声を聞いたと信じた。
鈍いオレンジ色をした光線がわずかでも屋根裏部屋に差し込むと、光子は真っ青になってお祖母さまの名前を叫んで、部屋のいちばん暗い場所へ駆け出していった。
そして、光が立ち去るまで震えながら、
「夜になって!」
とお祈りをした。
かわいそうに!無二の親友キティは、太陽の光に丸焼きにされないようにつねに光子の胸に抱きしめられていたために、彼女の汗でクタクタになっている。

ナイスしてくれた人(5

  • j.nickName
  • j.nickName
  • j.nickName
  • j.nickName
  • j.nickName
  • 5

次の投稿

前の投稿

Official

Simplog

便利なアプリをダウンロード

iphone QRコード
App Store
Google play

簡単ブログを
はじめてみましょう!

Simplogについて

ここに写真をドラッグ&ドロップ

ファイルを選択

※2MBまで