『中国古典一日一話』ー守屋洋
●「絶対負けない理論」を追及-最後に笑う勝利とは

✪戦後の日本で、いちばん広く読まれてきた中国の古典のひとつが、この『孫子』と呼ばれる兵法書かもしれない。

『孫子』はどうすれば戦いに勝てるか、どうすれば負けない戦いができるか、その理論を追及した本であるが、そのさい前提になっている考え方が二つある。

 

第一は、戦わずして勝つ、ということだ。戦いに訴えて相手を屈服させるのは最低の策であって、戦わずして目的を達するのが理想の勝ち方だというのである。

なぜなら、武器をとっての戦いとなれば、どんなに上手く戦っても味方にも損害が出る。下手をすれば国力の疲弊を招きかねない。そんな勝ち方は、かりに勝ったとしても誉められた勝ち方ではないのだという。

では、戦わずして勝つにはどんな方法が考えられるのか。たとえば外交交渉である。これで紛争を解決することができれば、あえて戦いに訴えなくてもこちらの目的を達することができる。こういう勝ち方が望ましいのだという。そういう意味では『孫子』の考え方は政治優位の思想に立脚しているといってよい。

 

第二の前提は、勝算なきは戦うなかれ、ということだ。つまり、戦いを始めるからには、事前にこれなら勝てるという見通しをつけてからやれ、というのである。

なんだ、当たり前のことではないか、とおっしゃる向きがあるかもしれない。たしかに、当然といえば当然のことである。しかし、われわれ日本人は、勝算も立たないのに「それ行け、やれ行け」をやりがちである。現代の企業戦略にもそのきらいがないでもない。『孫子』は、そんなやり方を厳しく戒めているのだ。

 

この二つの前提のうえに立って戦略・戦術の理論を追及しているのが、『孫子』である。その特徴をひと言でいえば、きわめて柔軟、かつ合理的な発想に貫かれていることだ。そういう意味でこの本は、とくに現代の管理職にとっても必読の文献である、といってよい。




#孫子 #戦い #追及

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